米国株は調整局面 その2 – PER

こんにちは、ともはちです。

 

昨日お話しした米国株は調整局面の続きです。昨日は、テスラ、エヌビディア、マイクロソフトの三社を例にとってお話ししましたが、底打ち(まだ確定ではありませんが)した銘柄とさらに下落した銘柄で明暗分かれましたね。

一旦底打ち局面のように見えるのが、エヌビディア、マイクロソフト。一方、さらに下落したのがテスラです。

さて、今日はこの違いが出た原因の一つと考えられるPERについてご紹介していきたいと思います。

目次

PERって何?

PERは、Price to Earnings Ratio(株価収益率)のことを指しており、株価を評価する指標の一つです(経営指標というよりは、株式評価観点でよく使われる数字です)。

PERという表記は、日本では一般的ですが、米国ではP/Eと記載されます。意味は同じです。

PERはどのように計算されるの?

PERは、下記の計算式で計算されます。

 PER = 株価 / 一株あたり純利益

一株あたり純利益は、純利益 / 発行済株式総数で求めることができます。

PERはどう見るの?

PERは、計算式からわかるとおり、株価は一株あたりの純利益の何倍か?ということを示しています。これは何を意味しているかというと、「成長に対する期待値」です。

PERが高い銘柄は、成長可能性を高く見られていることを示しており、対してPERが低い銘柄は、成長可能性が低いと見られていることを示しています。

純利益が変動しない場合、株価が上がるとPERは上がりますし、株価が下がるとPERは下がりますが、成長可能性という将来性を期待されている銘柄は買われていきますので株価が上がり、PERが上がると考えるとわかりやすいかと思います。

適正なPERは?

業種によって、大体この程度のPERというのがあります。これは業種によって、どの程度の収益性と将来性かというコンセンサスが株式売買の中で生まれてきますので、過去データから業種による平均値が算出できるためです。

東証全体で言えば、PERは15くらいですし、IT関連株だとPERは20を超えてきます。マザーズなどの新興市場の勢いのある銘柄だとPERが100を越えることもあります。

IT関連株が市場平均値を越えるのはIT関連が比較的収益性や将来性が高いビジネスモデルだからです。勢いのある銘柄だとPERが高騰するのは、現在の収益性というより将来に期待する点が大きいからですね。現状のビジネスからすると収益は少ないですが、今後の期待値が高いのでPERが跳ね上がりやすいということです。

PERの観点から銘柄を見てみよう

さて、本題のなぜ銘柄によって明暗分かれたかを見てみましょう。

最初にエヌビディア(NASDAQ:NVDA)です。このエヌビディアの直近12ヶ月のPERは95です。株価は上昇していますが、勢い良い成長銘柄と考えるとPERは(過熱感はありますが)期待値高めな銘柄なので100近いんだなとみることができます。

日足で見てみると、9/4の最安値近辺で反発しているのが確認できますが、これ以上落ち込んでいないのは、この高い期待値がまだ維持されるだろうと考えている投資家が多いからと想定できます。

NVDA_Daily2

次にマイクロソフト(NASDAQ:MSFT)です。マイクロソフトの直近12ヶ月のPERは37です。エヌビディアほどではありませんが、クラウド事業、BtoB向け製品の業績が好調なマイクロソフトの成長性が買われていると考えると、PER37というのは極端に高い数値とは言えないと思います。

そんなマイクロソフトの株価ですが、日足で見てみるとやはり同じように9/4の最安値近辺で9/8も反発していますね。上ヒゲも長いので上値は重そうに感じている投資家が現状は多い状況ですが、これ以上下がる必要性も感じられていないと想定できます。

MSFT_Daily2

上記二つの銘柄は、PERだけですべてを語るのは若干乱暴ではあるものの、収益性と将来性の期待値に対する株価形成の観点でみると、この辺りが無難なラインというコンセンサスができたため、株価下落が収まってきている可能性があります。

一方、テスラ(NASDAQ:TSLA)を見てみると、直近12ヶ月のPERはなんと驚愕の1088です。いくら勢いのある銘柄と言っても、この値は相当過剰な値です。投資家の中にもそう考えている人が多いと思われるので、テスラについてはまだ高値すぎると感じられたため、9/8も下落し市場コンセンサスの形成ラインを探っている状態なのです。

見えている状況からだと下値は335ドル近辺でサポートラインを形成して、そこから少し反発している感じですね。

TSLA_Daily2

ちょっと極端な例で説明しているところがありますが、PERをどう捉えるかという観点ではわかりやすい題材だったように思います。

ただ、かなり単純化して説明していますので、ミスリードしやすい点もあります。その点、補足します。

例えば、マイクロソフトのPER 37はある程度適正と言っているが、違うIT関連の会社のPER 40だと高いのか?と言われると、それは一概には言えません。また、テスラのPER 1088はあまりにも高すぎと言っていますが、これが800だったら適正なのか、700だったら適正なのかというのも一概には言えません。

PERの評価は業種やその会社の将来によって変わってきますが、それをどう評価するのかは投資家によっても異なりますので、PERの値だけをもってして高い低いを論じるのは難しいためです。

じゃあ、どう適正と見るか?というと、一番は長期の株価の値動きです。株価は投資家のセンチメントによって振れますので、一概に正しい値を示しませんが、長期的なトレンドという観点では、多くの投資家たちの売り買いの結果として形成されるものになり、結果的に長期的には一定のコンセンサスを株価という形で形成していきますので、そこから導き出されるPERのレンジがその会社の適正PERレンジと考えることができます。

あるトレーダーの方が言っていたことですが、値動きはすべての事象を織り込むという表現は確かに言い得て妙だと思います。

また、もう一つミスリードしやすい点ですが、純利益という概念は必ずしも正しい会社の収益力を表していません。どういうこと?と思われますが、大きく二つの観点で会社の本業収益力を正しく表せないからです。

一つ目が純利益は本業の収益力を表す営業利益に、営業外収益等、その他の収益が合算されますので、極端な話、本業がうまくいってなくても株の売買だけで収益を上げていると純利益は高くなり、その会社の本業収益力を正しく表現できなくなるためです。

二つ目は利益の算出には減価償却が入るためです。会計的な話になりますが、設備投資が多額な会社は減価償却費用がドンドン積み増されていきますので、利益は圧縮されていきます。これは有名なところだと、Amazonのような設備投資型の会社とかNetflixのようなsaas関連の会社で同じくコンテンツやインフラなどに多額の設備投資をする会社が該当します。

こういった会社は設備投資をガンガンしているフェーズだと、純利益が圧縮されるため純利益が非常に少なくなる(場合によってはマイナスになる)が、実際の収益性は高いケースがあります。そのため、投資家が純利益だけでは見えない収益性を高く評価している場合、PERが極端に高くなることがあります。

今回の説明では省きますが、この場合、正しい本業での収益力を見るときは、営業キャッシュフローを見るとその会社の実力がわかります。キャッシュは嘘つかないです。

まとめ

PERだけですべてを説明するのは暴論ではありますが、PERという一つの数値からでも、この会社の事業の収益性、成長性をどう評価しているのかがわかり、株価形成ラインの目安を読み解くことができるんだというのが、なんとなくでもイメージいただけたら嬉しく思います。

 

 

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